読んだ理由
SaaSベンダーに身を置く立場としてサブスクリプションというものの根本的な考えや持つべき視座を身につけたかった。
なぜサブスクリプションモデルがここまで急成長したのか。
それに伴う生活やビジネスへの影響は何なのか。
これからサブスクリプションモデルはどこへ向かうのか。
少し前の書籍だがZuoraのCEOが著者というだけで読むに値するということでAmazonでポチリ。
メモ
製品中心から顧客中心へ
これまで(サブスクリプションモデルが台頭する前)は、企業はできるだけ多くのものを多くの販売・流通チャネルに流してきた。
売れればよし、誰が買ってくれたかは気にしない。
しかし、サブスクリプションモデルを展開する企業は誰に売っているのかを知っているし、顧客一人一人が異なる顔を持っていることを認識している。
顧客が何をどんな方法で欲しがっているのかを知っている企業は、独りよがりの製品を作って顧客に一方的に売りつけることに労力と時間をかけている企業よりはるかに良好な成果を上げる。
なぜサブスクリプションモデルが急成長したか
デジタルユーザエクスペリエンス(特にスマートフォンの利用)が大幅に改善されたことが大きい。
今日のサブスクリプションはデジタルで届けられ、その過程で膨大の量のデータが生成される。
人々は店舗に行かなくても欲しいものが手に入り、それはいつでもどこでもアクセスできるということを意味し、所有という概念から解放されたといえる。→これは自分の解釈。
サブスクがマーケティングに与えた影響
古い企業のマーケティングの仕事は「プッシュ」と「プル」を駆使し、できるだけ多くのものを売ること。
プッシュ:チャネルの製品を流すこと。
プル:顧客をチャネルに呼び込むこと(広告・宣伝)。
それに対して今日のブランドは、広告ではなく経験を通して伝えられる。
また、すべての顧客にサブスクライバーIDが付与され、すべてのトランザクションとプロセスが追跡される。
これは1 to 1 マーケティング(パーソナライズされたマーケティング)につながり、マーケティングの4つのPを変える。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- プロモーション(Promotion)
- 流通(Place)
プライシング
物理的な製品に対する価格は、コストと望ましい利益で決まる。
サブスクリプションの価格は物理的な製品に対してつけるのではなく、それを使用することで得られる結果に対してつける。
これが難しい。
- シンプルな料金体系
- 適切な基本利用量の設定
- 利用量の増加を適切に反映する価格曲線の設定
- 利用量の増加が収益増加につながるように設計
- etc…
サブスクと営業
今と昔では企業が成長する方法が違う。
以前は、
- 販売数を増やす
- 価格を上げる
- コストを下げる
サブスクリプションは、
- より多くの顧客を獲得する
- 顧客価値を高める
- 顧客をできるだけ長くつなぎとめる
アップセル・クロスセルはやはり重要。
成熟した企業であれば収益全体の平均20%を占める。
ここをどう増やしていくか。
適切なタイミングで適切なサービスを適切な担当者に対して売り込むなど。
サブスクリプション・エコノミーの損益計算
ARRn – Churn + ACV = ARRn+₁
- ARRn:n年度開始時のARR
- 企業はARRの一定割合をそれを支えるための活動に支出(売上原価、一般管理費)したり、研究開発のために投資する。
- Churn:解約。
- 企業はこれを抑制してARRの減少を防ぐ
- ACV:年間契約金額(Annual Contract Value)
- 企業はこれを増やしてARRを増大させるために、新規顧客と既存顧客の両方に向けた活動を行う
- ARRn+₁:n+₁年度開始時のARR
従来のITシステム(OTC)がサブスクに対応できない理由
①顧客の経験を反映できない
顧客の1つ1つの行動を各システムに書き込む必要がある。
週極めから月極めに切り替えるや、ライセンス単位ではなく従量課金に変更するといった変更。
1か所を変更すると至るシステムに不適切な干渉が生じる。
②価格を素早く変更できない
レガシーなシステムではプライシングとパッケージングを素早く変更して顧客の要求に応えたり、適正価格の見極め検証ができない。
③カスタマー・インサイトを得ることができない
1人、あるいは1社の顧客について、そのライフサイクル全体を単一の表示画面で見ることができない。
新しいITアーキテクチャ
中心に顧客(サブスクライバーId)をおく。
顧客が行う、契約更新、休止、アップグレード、ダウングレードなどのアクションをOTCシステムにリアルタイムで知らせる必要がある。
プライシングとパッケージングも同様。
サブスクリプション文化とは
自社のサービスを使ってくれている顧客に確実に成功してもらうことであり、それを自社の収益に変換すること。
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